「端末価格と通信料金の分離」 MVNOが果たした役割は? – BIGLOBEニュース

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各キャリアの割引きを加味すると、端末代が実質0円になる販売や、端末代そのものを0円にする一括0円が横行したこともあった

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 MNOとMVNOのビジネスモデルは異なりますが、端末販売をどのように捉えるかも大きく異なります。それはなぜでしょうか? 今回は携帯電話業界の永遠のテーマの一つでもある「端末価格と通信料金の分離」にスポットを当て、MNOとMVNOの戦略の違いを明らかにしていきたいと思います。
●モバイルビジネス研究会が描いた未来
 1985年に携帯電話サービス(当時はショルダーフォン)が日本で開始された頃、端末は現在に比べ非常に高価なものでした。まだ一般消費者が携帯電話を持てる時代ではないのは当然として、業務用として携帯電話を利用していた法人でさえ、端末は通信事業者からレンタルで提供されていたのです。
 ただ、この「端末レンタル」というのは固定電話の時代では長らく当たり前でした。固定電話が一般の家電販売店で(契約なしで)買えるようになったのは、1985年の電電公社民営化以降の話です。
 ただ、携帯電話については、それ以降も利用者が購入をすることはできない時代が続きます。アナログ方式の第1世代携帯電話から、デジタルの第2世代携帯電話(PDC方式)に移行が始まった頃、1994年4月に、ようやく携帯電話もレンタル制から今と同じ売り切り制に移行しました。しかし、固定電話と異なり、一般の家電販売店で(契約なしで)携帯電話を買うことはそれ以降もできなかったのです。
 なぜなら、事実上回線設備の運用が電電公社とその継承会社であるNTTに独占されていた固定電話と違い、携帯電話は、さまざまな事業者が異なる通信方式、周波数でサービスを提供していたからです。固定電話は、NTTの電話回線に接続することが可能な機能を持っていれば、法改正後はどのメーカーでも自由に製造・販売できるようになりました。
 一方この頃の携帯電話は、特定の携帯電話会社の求める通信仕様に合わせてメーカーが端末を(ゼロから)製造し、それを一括で携帯電話会社が買い取って、そのショップで販売するものだったのです。この傾向は、携帯電話がデータ通信に対応した時代(iモード, J-SKY等)には、さらに顕著になっていきます。
 このようにして多くの端末在庫を持つこととなった携帯電話会社は、1990年代後半の活発な競争環境の下、端末を1円で販売することが珍しくなくなり、そのために携帯電話は爆発的に普及していきました。なぜ1円で端末を販売できたかといえば、2年縛りの契約条件の下で利用者から長期間、高額の通信料を徴収できることを前提に、携帯電話会社が端末の本体価格と販売価格(1円)の差額を負担していたからです。
 2000年代半ばになり、携帯電話の普及が十分に進んでくると、それまで携帯電話の爆発的普及を支えてきた2年縛りや高額な通信料が一転して問題視されるようになります。2006年に開始された総務省の有識者会議「モバイルビジネス研究会」では、携帯電話会社が負担してきた差額(販売奨励金)について、以下の6つの課題が挙げられています。
1. 利用者が通信料金と端末コストの関係性を十分に認知していない可能性がある
2. 同じ通信料金を支払っている利用者のうち、頻繁に端末を買い換える利用者と、そうでない利用者は公平でない
3. 販売奨励金が通信事業者の事業コストを押し上げている
4. 全ての端末が1円で提供されていると、ハイエンド端末以外は売れず、端末の多様性が阻害される
5. 販売奨励金を通信事業収支の一部として計上し、接続料に反映させることは、公正ではない
6. 通信事業者が決めた仕様に従ってメーカーが端末を製造するモデルでは、端末やサービスの多様化が制約される
 このような課題について検討した結果、モバイルビジネス研究会は2007年9月の最終報告書において、SIMロック解除の推進等の施策と並び、端末価格と通信料金の区分を明確化することを方針として打ち出し、それを受けて総務省が政策化をしました。
●MNOの逆襲
 これを受け、MNO各社は端末価格と通信料金を分離するプランを打ち出します。しかし、この新プランによりこれまで隠れていた端末価格を明示的に見せられた利用者による端末の買い控えが起き、業界内では官製不況だとして問題にされるようになりました。
 MNO各社はこの事態に動きます。モバイルビジネス研究会の報告書に従い、端末は正規の販売価格を明示し割賦(分割払)で販売する、しかしその分割払いの金額に近い、月月割、月月サポート等の名称の通信料金の割引を提供し、実質的な合計負担額を小さく見せるようになります(実質0円)。さらに、MNPの利用による割引により、端末価格を0円になるような販売方法が横行するようになりました(一括0円)。
 これらの新しい販売方法は、モバイルビジネス研究会が問題視した6つの課題のうち、1と5こそ満たしましたが、その他の4つは満たさず、同研究会が目指した「端末価格と通信料金の分離」という理念からは程遠い販売方法でした。しかし、これにより官製不況を乗り越えた携帯電話事業者は、折しも開始されたガラケーからiPhone/Androidスマートフォンへの乗り換えによる需要喚起と、第4世代携帯電話サービス(4G LTE)により、大きく事業規模を伸ばしていくことになります。
 それではなぜ、モバイルビジネス研究会の目指す方向性はうまくいかなかったのでしょうか。2000年代後半は、既に現在の3キャリア体制がおおむね完成した時期です(2008年に創業したイー・モバイルや、PHSを提供していたウィルコムは健在でしたが)。
 もし業界に3社しかプレーヤーがいなければ、それぞれの会社が全く異なる販売方法を取ることは非常に難しいと考えられます。各社が利用者になじみのあり、実績のある販売方法で横並びになるとすると、異なる販売方法にチャレンジする余裕がありません。つまり業界内のプレーヤーの数が少なすぎたのです。
●SIMロックフリー端末が実現した「端末価格と通信料金の分離」
 2012年に筆者が開発に関わったIIJmioのLTEサービスが開始されたのを皮切りに、数多くのMVNOが参入しましたが、今のようにSIMロックフリー端末は販売されておらず、この頃に事業参入したMVNOにとって端末に関わる問題は当初から大きいものでした。
 利用者ゼロからスタートしたMVNOには、MNOのように自ら端末を企画し在庫を持つことは不可能です。そのため、利用者は、手持ちか中古のドコモブランドのAndroid端末を使うか、海外から個人輸入したiPhoneやAndroid端末を利用するかしかMVNOのSIMカードを利用するための選択肢がない状態でした。
 しかし、この端末の問題をものともせずMVNOは成長していきます。これは、潤沢に中古市場に供給され続けていたドコモブランドの端末のおかげといえます。皮肉にも、MVNO市場の最初のハードルは、キャッシュバック目当てで販売され、場合によっては一度も使われることのないまま「新古品」となったMNOブランドの端末が突破させたと思っています。
 一度弾みがついた後は、良いスパイラルがMVNOの成長を加速します。国内のMVNO利用者が増えたため、世界中でSIMロックフリー端末を販売していた海外メーカー(LG、ASUS、Huaweiなど)が日本市場に続々と上陸し、ようやく、携帯電話が固定電話のように家電販売店で契約なしで買えるようになりました。
 Appleでさえ、2013年には直営店(Apple Store)でSIMロックフリー版iPhoneの販売を始めます。新しい販売方法に積極的にチャレンジすることができる新規参入事業者(MVNO)、潤沢に中古市場に供給され続けたキャリアブランドの端末に加え、オープンマーケットで買えるSIMロックフリー端末が加わることで、モバイルビジネス研究会の目指した「端末価格と通信料金の分離」という課題がクリアされたのだと思います。
 その後、MNOの「実質0円」「一括0円」は共に規制され、一部のMVNOは端末価格と通信料金が混然一体となったプランを提供するなど、端末価格と通信料金の分離は一進一退の状況です。これは、「端末価格と通信料金の分離」という理念が、利用者にとって自らの支払いが透明化するというメリットと、別々にコストを考えなければならなくなり面倒であるというデメリットの両方を持っているからではないでしょうか。
 つまり、端末価格と通信料金の分離が金科玉条であるというより、事業者がさまざまなメリット・デメリットを勘案したさまざまな販売方法を実現し、それを利用者が選択していくという、多様性こそが重要であるのだと思います。
●4年縛りの是非とは
 さて、昨今、メディアで「4年縛り」と呼ばれる新しいスマートフォンの販売方法が採り上げられるようになりました。これはソフトバンクが「半額サポート」、KDDIが「アップグレードプログラムEX」という名称で提供している販売方法です。新規にスマホを契約する際に48回払い(4年払い)の割賦で契約し、2年経過後に再び同販売方法により48回払いの割賦契約で新しいスマホを買い、最初に買ったスマホを返却すると、その最初に買ったスマホの残債(半額)がゼロとなる、という販売方法です(細かい適用条件は各社のWebサイト等をご覧ください)。
 これは、利用者から見ればスマートフォンを半額で購入できるという魅力的な販売方法である反面、2年経過後に他社に転出すると、残債免除の特典が失われ、端末代金の半額を支払わなくてはならなくなるというデメリットがあります。つまり、利用者が容易に他社に離脱できない(ロックイン)という特徴を持つ販売方法でした。
 似通った販売方法として、車の残価設定型ローンが挙げられます。これは、車のローンを組んで購入した後、一定の期間(車検に合わせ3年であることが多いようです)経過後にその車を返却することで、その時点で残っているローンの残債がゼロになるプログラムとなります。この場合、車を返却しなくとも、引き続き完済までローンを支払い続けることもできますし、その時点で残債を一括で完済することも選べます。
 このような車の新しい買い方は、頻繁に車を買い替えても負担が比較的軽く済むというメリットがあり、多くの消費者が利用し社会的に受け入れられています。
 携帯電話と車の違いは明らかです。携帯電話の「4年縛り」は2年後に残債をゼロにする条件として、次の4年間の期間契約を求めるのに対し、車の残価設定型ローンは3年後に同じメーカーの車を買うことまでは求めていない(3年時点で他メーカーの車を買っても問題ない)ところにあります。そして、ここがまさに公正取引委員会が2018年6月の報告書で指摘した問題点となります。
 筆者は、長らく携帯電話のスタンダードであり続けてきた2年縛りというプランは、直ちに問題だとは思っていません。利用者が割引を受ける代償として2年間の長期契約を約束すること自体は、利用者がそれを望むのであれば決して不当な条件ではなく、またその離脱に関する条件についても徐々に緩和されてきており、ロックインにより他社の事業遂行を直ちに困難にするほどの問題ではないと考えられるからです。
 しかし、「4年縛り」については端末販売と通信料金が複雑に入り組んでいるだけでなく、利用者の他社への乗り換えを心理的に制約する効果が非常に高く、一度でも契約してしまった顧客の以後の流動性を阻害し、他社の事業に大きな困難を与えかねない懸念があると考えます。
 「4年縛り」を導入した2社(KDDI、ソフトバンク)は、公正取引委員会の指摘を受け、これらの販売方法の改善を行う方針を明らかにしています。高騰するハイエンドスマートフォンの端末価格を考えれば、通信料金から端末価格へ補填(ほてん)する選択が利用者により一層望まれることもあるでしょう。
 しかし、利用者がハイエンドスマートフォンを利用しやすいプランを考えていくことは、利用者を心理的に過度に縛ってよいという意味ではないことを、MNO、MVNOを問わず携帯電話事業者は肝に銘じる必要があるのではないでしょうか。
●著者プロフィール
佐々木 太志
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) ネットワーク本部 技術企画室 担当課長
 2000年IIJ入社、以来ネットワークサービスの運用、開発、企画に従事。特に2007年にIIJのMVNO事業の立ち上げに参加し、以来法人向け、個人向けMVNOサービスを主に担当する。またIIJmioの公式Twitterアカウント@iijmioの中の人でもある。





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