新型iPhoneも「超高額」になるが、それでも誰もが購入する – WIRED.jp

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アップルの発表イヴェントが9月12日に行われることが決まった。ここで発表されるiPhoneの新モデルも、おそらく「iPhone X」と同様に超高額になることが予想される。だが、それでも消費者が殺到すると確信できる理由が、これだけある。

TEXT BY KATIA MOSKVITCH

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(UK)

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2017年9月12日に「iPhone X」が発表されてから、早くも1年が経とうとしている。PHOTO: QI HENG/VCG/GETTY IMAGES

長蛇の列。折りたたみ椅子に寝袋。近場のカフェで買ってきたコーヒーやホットチョコレート。10年以上前から、毎年変わらず繰り返されている光景だ。2007年6月29日、人々は世界を変えるデヴァイスを手に入れるために列に並び、辛抱強く待っていた。初代「iPhone」だ。

アップルはこの年に100万台以上のiPhoneを売り上げた。販売台数は翌年には1,000万台に跳ね上がり、初代の発売から11年を経た今年になってもまったく衰えを見せていない。

iPhoneの販売はいまや年間2億台を超える。昨年は2億1,580万台で、今年も確実に増加するだろう。業界アナリストでアップルの情報通としても知られるホレス・デディウは、iPhoneを「歴史上最も成功した製品」と呼ぶ。

スマートフォンを発明したのはアップルではなく、ノキアだ(エリクソンという意見もある)。携帯電話にカメラや音楽プレーヤー機能を付けたのも、アップルが初めてではない(この栄誉はサムスンのものだ)。しかしアップルは、ハードウェアとソフトウェアを完璧に統合し、両方の魅力を引き立てながら使いやすくかつ便利にした最初の企業だ(iPhoneは発売から2年間はコピー&ペーストすらできなかったことには目をつぶろう)。

世界シェアから見れば、スマートフォン市場を主導するのはサムスンである。だが、アップルは販売額と利益率の覇者という、より価値のある称号を手にしている。新型iPhoneの発表イヴェントは9月12日に開かれることが決まったが、次期モデルによりアップルの足場はさらに強固なものとなるだろう。

高い利益率が市場制覇の原動力

それでは、アップルはどうやってここまで上り詰めたのだろう。答えはシンプルで、生産コストが(比較的)安い製品を高額で販売し、人々がそれを買うように仕向けたのだ。

現行のフラッグシップモデルで、値段も最も高い「iPhone X」を見てみよう。米国でのiPhone Xの販売価格は1,064ドル(約11万8,000円)だ。英国とユーロ圏ではさらに高く、999ポンド(約14万4,000円)と1,159ユーロ(約14万9,000円)に設定されている。

一方で、最高経営責任者(CEO)のティム・クックは否定しているが、iPhone Xに使われている部品はすべて合わせても400ドルに満たないとされる。生産ラインではオートメーションが進んでいるので組み立てコストはごくわずかだし、研究開発への投資も競合メーカーと比べて少ない。

こうしたことが相まって、アップルは2,850億ドルという途方もない額の手元資金をもつようになった。安定した業績に支えられ、時価総額は8月初めに1兆ドルを超えている。

アップルにとってさらにありがたいのは、顧客が製品価格をまったく気にしないという点だ。iPhoneユーザーは顧客満足度、ブランドへの忠誠度、製品寿命、中古買取価格といったことに関する調査で、すべて高い得点を出している。

そしてもうひとつ忘れてはならないのが、App Storeという“金のなる木”だ。このアプリとサーヴィスを組み合わせた壮大なエコシステムは、Android関連の売り上げをすべて合わせた額の少なくとも2倍に相当する収入をアップルにもたらすという。

世界のiPhoneユーザーは8億人を超える。理論的には市場の飽和と呼ばれる状態が起こり、安価なモデルを含む別の選択肢を求める声が出てくるはずだが、アップルには常識は通用しない。このクパチーノの巨大企業は、もはや革新性を失ったデヴァイスにもあり得ないようなプレミア価格をつけて売ることができるのだ。

販売台数の頭打ちを高単価でカヴァー

ただ、iPhoneにかつての輝きがなくなってしまったのは、必ずしもアップルにおけるイノヴェイションの欠如が原因ではなく、同じことが大半のメーカーにも起きている。スマートフォン業界は全体的に、ユーザーが毎年でも新しいモデルを買わずにはいられなくなるような技術革新を生み出す力を失っている。

一方でiPhoneは、依然としてファーウェイ、シャオミ、Oppoといったメーカーの製品の2倍から3倍の値段で店頭に並ぶ。中堅メーカーのモデルの性能は、アップルやサムスンなど業界大手とほとんど遜色のないレヴェルまで達しているにも関わらずだ。こうした状況はいつまで続くのだろう。

iPhoneの平均使用年数が延びているため、販売台数は一時期ほどの勢いでは拡大してない。だがアップルは、製品単価を上げることで売り上げが落ち込むことを防いでいる。

通信・メディア業界の市場調査会社であるOvumによると、iPhone Xは発売から1年を経て、iPhoneの全販売額の約3分の1を占めるようになった。Ovumのアナリストのダニエル・グリーソンは、「アップルが自社のテクノロジーを駆使してユーザーにとって価値ある体験を生み出し、高級ブランドとしての地位を保っていく限り、同社がiPhoneの販売から巨万の富を得る状況は続くでしょう」と話す。

言い換えれば、アップルのファンにとって価格は問題ではない。リンゴのマークが付いている限り、値段がいくらでも買ってくれるというわけだ。

Apple

iPhone Xの発表当時、日本円にして10万円超という強気の価格設定は衝撃的だった。PHOTO: JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

OSから利用体験まで一気通貫できる強み

ファイナンシャルプランナーのルーク・ウォーカーはロンドン在住で、最初に買ったiPhoneは「iPhone 4」だった。アップルストアで事前予約したが、受け取ってからわずか6時間後に落として角がへこんでしまった。ウォーカーは「すごくショックでした。以来、たくさんのケースにとんでもない額をつぎ込んでいます」と言う。

いまでは2年ごとに新機種に買い換えているが、これは携帯電話の契約更新に合わせるだけでなく、古いモデルでは「iOS」のアップデートに性能が追いつかなくなるのが嫌だからだという。「iPhone 8を新品で買ったときには、しばらくはこれでいけるだろうと思っていました。でも、たいして時間が経っていないのに、もう新モデル発売のニュースに目を光らせていますよ」

その価格にもかかわらずウォーカーがiPhoneを選び続ける理由は、OSだ。彼は「iOSは本当に素晴らしいと思います。デザインが秀逸ですし、動きも速く、とにかくAndroidより断然使いやすいですね」と話す。「iPhoneからの乗り換えを考えるとしたら、Android携帯の無料トライアルか何かがある場合くらいでしょう」

iPhone

アップルは旧モデルにも最新OSを適用できる余地を残すことで、その利用体験の価値を高めようともしている。PHOTOGRAPH COURTESY OF APPLE

もちろん、高価なスマートフォンはiPhoneだけではない。サムスンのフラッグシップモデルも同じくらい価格が高い。ただ、アップルが特異なのは、顔認証システム「Face ID」からユーザビリティの改良のような細かい部分まで、常に新しいテクノロジーを世に送り出している点だ。

例えば搭載するカメラは、性能そのものでは競合製品が優れている場合も多い。しかし、ユーザーインターフェースなどの使いやすさと実際に撮れる写真のクオリティがあるからこそ、iPhoneは世界で最も使われているカメラになっていると指摘するのは、アップルの動向に詳しい業界アナリストのカロリーナ・ミラネシだ。

さらに、Androidを搭載した機種にはメーカー同士の競争があり、それが価格の引き下げ要因となりうる。これに対し、アップルはデヴァイスだけでなくOSも自社で賄っているために、販売価格を管理するのが容易だ。Ovumのグリーソンは、OPPOやOnePlusのようなハイスペックのモデルは、アップルではなくむしろサムスンにとって大きな脅威だとした上で、「アップルユーザーは非常に強い忠誠心をもっています」と付け加える。

ユーザーを囲い込む強固なエコシステムの存在

顧客を囲い込む点において、同社のエコシステムは重要だ。アップル製品のファンは、このエコシステムがあるからこそiPhoneを高く評価し、どれだけ高くてもアップルの言い値を払ってくれる。また、ブランドへの強い忠誠心も、アップル以外の製品への乗り換えを防ぐうえで役立っている。iPhoneより安い選択肢はあるが、アップルのロゴがなければ問題にはならないというわけだ。

デジタル・サーヴィス・デザイナーでiPhoneを愛用するドミニク・ウィンザーは、「iPhoneには本能にアピールしてくるものがあります」と言う。「ブランドとは、結局は自己表現のひとつです。自分が何者であり、現実世界でどのように生きていきたいかを説明するためのツールなのです。ライフスタイルを示すもので、同時に憧れでもあります」

アップルはハードとソフトとサーヴィスという3つの要素を完璧に組み合わせることで、特別なだけでなく、利益率を伴ったユーザー体験を創出している。アナリストのデディウは、「アップルは1970年代からずっと同じやり方でやってきています」と指摘する。例えば、Macは初代が発売されてから34年経ったいまでも、平均的なパソコンの約5倍の価格で売られている。

ロンドンに拠点を置くマット・ハムネットは、数年前に自身のコンサルティング会社を立ち上げた際にデルのノートパソコンを購入し、仕事はすべて「Microsoft Office 365」とグーグルのアプリケーションで乗り切ると決めた。ハムネットは「iPhoneだけは買うまいと思いました」と話す。

しかし、やがてスマートウォッチが欲しくなった。「Apple Watch」以外の製品を探すために「ものすごい時間」をかけたが、機能的に優れていてデザインも気に入るものは見つからなかったという。結局、Apple Watchを買い、その後に「iPad Pro」とiPhoneにも手を出した。すべてはアップルのエコシステムのせいだ。

アップルの呪縛から解き放ってくれるものがあるとすれば、それは自分の思い通りに機能してくれるスマートフォンとタブレットとスマートウォッチのセットだと、ハムネットは言う。ただいまのところ、アップル製品以外でそういうものを見かけたことはない。

デジタルマーケティング分野で働くマイケル・ジャレットも同じように感じている。ジャレットはMac、iPhone、iPadに加え、Apple TVももっており、いまさら別のOSに乗り換えることは考えられないという。「アップルのエコシステムにどっぷりはまっています。サムスンの最新モデルやグーグルのスマートフォン『Pixel』も触ったことはありますが、OSが自分に合わないと感じました。アップルがすごいのはOSのためだと思います」

アップルは最先端を突き進めるか?

究極的にはイノヴェイションの問題というより、アップルのプレゼンテーション能力なのかもしれない。

人工知能(AI)を例に考えてみよう。最近では、Androidを中心に多くのスマートフォンがAIを使った機能を搭載するようになっている。グリーソンはこれについて、「アップルが例えばFace IDのようにAIを使った機能をつくる場合、それを業界で最高のものに仕上げます。そして、その技術の価値を顧客に証明してみせるのです」と説明する。

強気な価格設定は、どこでも通用するわけではない。例えばインドでは、iPhoneの市場シェアは比較的低い。平均所得から考えればiPhoneを買える層は非常に限られているため、当然の結果ではある。だがアップルは、旧モデルの販売期間を伸ばし、価格を引き下げることでシェアを伸ばそうと試みる。一方で、「iPhone SE」のような低価格モデルが成功を収めているわけではない。

ただ、アップルは市場シェアでサムスンを打ち負かす必要はない。重要なのは販売額と利益だ。グリーソンは「彼らにとって成功の判断基準は量ではなく金額です」と言う。

新型iPhoneにたくさんの特別な機能が加わる可能性は低い。スマートフォンはどのメーカーの製品も似たり寄ったりになってきており、最新モデルはたいていがデュアルレンズの背面カメラと指紋センサーを搭載し、顔認証でロック解除ができる。

もちろんアップルだけの特典はある。iOSに始まり、App Store、Apple Music、iCloudといったサーヴィスや、Apple WatchやiPadなどほかのアップル製品とのスムーズな連携もiPhoneならではだ。アナリストのマーク・ロゴウスキーは「これだけ多種多様なデヴァイスで統一された使い心地を提供できる企業は、アップル以外にはありません」と話す。また、安全性や個人情報の扱いといったことでも、iPhoneはAndroid端末全般と比べて問題が見つかることが少ない。

それでも、最終的には熱狂的なファンと技術革新というところに話が戻ってくる。「ロイヤリティの高さは大きな強みです」と、ジャレットは言う。

一方で重要なのは、常に最先端を突き進むことだ。「さもなければ、若い世代はアップルではなく別のブランドを選ぶようになるかもしれません。これは将来的な転落につながります」





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