アニメ『ハイスコアガール』に込められた、超高濃度のゲーム愛ーー制作統括・松倉友二インタビュー – リアルサウンド

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 本日7月13日より、テレビアニメ『ハイスコアガール』(TOKYO MXほか)が放送開始する。押切蓮介の人気コミックを原作に、90年代のゲームセンター、格闘ゲームを軸に描かれる異色のラブコメディだ。リアルサウンドでは、同アニメで制作統括を務める、アニメプロデューサーの松倉友二氏を直撃。本作に込められた、あふれんばかりのゲーム愛とこだわりが明かされた。アニメ『ハイスコアガール』の視聴が二度美味しくなる、独占インタビューをお届けする。 
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“ゲーム警察”も納得のこだわり

――映像を観せていただき、アニメーションとゲーム画面がうまく融合していて、かつてのゲームセンターの雰囲気もリアルに再現されているのが印象的でした。原作の独特な世界観も含め、アニメーション化する上でどんな点にフォーカスしましたか?

松倉友二(以下、松倉):「本物」のゲーム映像をどうやってぶち込んでいくか、ということが課題でした。私はゲーム業界で働いていた時期もあり、オンタイムで、本作で描かれている80年代後半から90年代前半のゲームシーンとともに過ごしてきました。その雰囲気をどうやって出すか、というところを模索していくなかで、地獄のような日々が始まるという(笑)。

ーー本編もそうですが、オープニングから懐かしのゲーム映像のオンパレードで、映像素材を集めるのは相当なことだったと想像しました。

松倉:その点は「高田馬場ゲームセンター ミカド」さんのご協力がなかったら成立しませんでした。登場しているゲームは、すべてミカドさんに基盤を用意してもらって、プレイ映像を収録しているんです。その後もハードルがたくさんありましたね。当時のゲーム画面はものすごく小さな画素数で表現されています。それを現在のHD画質でどう再現するか、という問題があって。押切(蓮介)さんの漫画っぽいシチュエーションを再現しようと思うと、ある程度、画面に寄らなければいけないのですが、そうするとドット絵が崩れてしまう。経験者でないと解らないかもですが、点の集合体であるドット絵は色の滲み等を利用してなんとなくキャラに見えるようになってるんです。拡大して大きくクッキリ表示するとただの点に……。どんなデータをどう加工すれば、どう見えるのかーーそういう技術的な検証を重ねてきました。

(c)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガール製作委員会 (c)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. (c)CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.

――なるほど。ガイルやザンギエフ(『ストリートファイター』シリーズ)のアップがないと、コミックの再現は成立しませんね。

松倉:そこの限界値を探りましたね。また、当時は液晶ではなくブラウン管で、画面に微妙な曲面がついていたり、スキャンラインが入ったりしていたじゃないですか。通常のアフターエフェクトのプラグインでそれを再現しようと思っても、全然本物らしくならない。何度も何度もNGを出して、このあたりもこだわっています。

――相当遠くから、斜めになってるゲーム画面が見える、というシーンにも違和感がありませんね。その他、苦労された点は?

松倉:とにかく資料がない、ということが問題でした。最初のころに出てくるゲームセンターの筐体ーー具体的に言ってしまうとナムコさんの「コンソレット」や、セガさんの「エアロシティ」が現役で稼働しているゲームセンターは、全然ありません。その他の筐体も含め、メーカーさんに図面すら残っていないものも多く、最悪、自分で中古のものを買うしかないか、と考えたり。自分で探し回っているなかで、可動してるゲームセンターさんで発見して、飛び込みで協力依頼をしました(笑)。

――驚かれたでしょうね(笑)。家庭用ゲーム機についてはどうですか?

松倉:だいたい自分で持っているのでよかったのですが、一つ問題は、(主人公の)春雄くんは、ゲーム機を箱にしまう律儀なやつなんですよ。30年前の家庭用ハードの外箱は、さすがに自分も保管していなくて。こちらもやはり、中古ショップに飛び込んで、出物があったら教えてください、とお願いしたり。例えば、ツインファミコンの外箱なんて、なかなかないんですよ。そういうことも含めて、ミカドさんをはじめ、いろいろなメーカーさんやお店の方にご協力いただいて、なんとか作っているという状況です。おかげさまで最終回まで、ほぼ全ての素材は手配できました。

――そういう苦労があってこその、正確な描写なんですね。

松倉:そうですね。やるからには、という思いもありましたし、厳しい“ゲーム警察”の方にも納得してほしかったですから。マニアックなジャンルではあって、それだけに思い入れが強いファンが多いですからね。

原作の“再現プレイ”にも注目

――原作には格闘ゲームを中心に、驚くべき“スーパープレイ”も出て来ます。ゲーム映像はすべて本物を使っている、ということは、その都度、再現プレイをしているということですよね?

松倉:これが非常に難しくて、基本的には、ミカドさんにお願いして、スキルのある店員さんや、いわゆる“ミカド勢”と呼ばれる常連の方に頼んでいます。ただ、原作ではけっこう無茶なプレイが多いんです。例えば『ファイナルファイト』でハガーを選んで、ノーミスでクリアなんてできるわけがない(笑)。世界にはやれる人が居るかもですが自分の周りには居ない! 今後、どんどん対戦シーンが増えていくので、どうしようかと思っているところです。

ーー現在もプレイ再現が続いていると。

松倉:ちょうどいま、押切さんのプレイを撮影していて、今後出て来ますよ。毎回、エンディングにプレイヤーをクレジットするので、特にゲームファンには最後まで観てほしいですね。TMF(『スーパーストリートファイターII X』のザンギエフ使い)さんやTZW(格ゲーからシューティングまでこなす、往年のスーパープレイヤー)さんなど、有名プレイヤーにもお願いしていますし、楽しんでもらえると思います。

――個別のプレイの解説用ではなく、実際の対戦の流れのなかで行われるプレイを再現するのは、相当な上級者でも難しそうです。また、画面がアニメーションに切り替わっても、ゲームの音が続いていて、そちらの“演技”も大変そうだと思いました。

(c)押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガール製作委員会

松倉:そうなんですよ。間にお芝居が入るなかで、ゲーム音が途切れたら違和感があるし、ゲーム画面に戻ったときに、リアルタイムで時間がつながっているようにしなければいけない。サウンドトラックからSEを引っ張って、うまく誤魔化そうとしても、筐体からアナログに聴こえてくる音とはやっぱり違うんです。そういうことを確認してもらうために、ゲーム考証・監修としてゲーム文化保存研究所(IGCC)の石黒憲一さんに入っていただいているのですが、そのチェックがまたものすごく厳しくて(笑)。

 原作でも、演出上、登場する筐体などの時系列が怪しいところがあって、その点も指摘があったので、物語に差し障らない範囲で、正しくできるところは、正しく直しています。最初は「フル3Dだし、あとはゲームの素材を用意すればそんなに大変な仕事ではなさそうだな」なんて思っていたところが、まったく大間違いでした。





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