【シゴトを知ろう】車輌開発エンジニア ~番外編~ – ニコニコニュース

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自動車事故防止などについて研究している米国道路安全保険協会(IIHS)は毎年、世界で発売されたモデルを対象に安全性評価試験を行い、安全性の高い車を発表しています。2017年12月に発表されたのは62車種。その半数が日本のメーカーが製造した車でした。 トヨタ自動車で車の開発を統括する「Zチーム」と呼ばれる部署の責任者である金子將一(しょういち)さんに、車の安全性や性能の向上に関わる仕事をする車輌開発エンジニアの仕事について教えていただきました。

技術には終わりがなく、常に進化し続ける

――車輌開発を統括する「Zチーム」とはどんな部署なのでしょうか?

技術系部門の中の設計に関わる部署は、設計する場所によって、例えばボディなら「B」、シャシー(*1)は「C」、エンジンは「E」と呼ばれています。「Z」はアルファベットの最後の文字です。つまり、「Z」は車輌開発の最後の決定をする部署を意味しているのです。「この先進んでいこう!」と決定するのも「Z」、「残念ながらあきらめるしかない」と判断するのも「Z」です。

車の開発の流れに携わるさまざまな部署を横串とすると、車に最後までついて行く一本筋の通った縦串が「Z」です。車輌開発に関わる多数の部署を統括する、非常に責任が重い部署になります。プリウスにはプリウスの「Z」があり、カローラやレクサスにもそれぞれの「Z」が存在しています。

*1 シャシー:車のエンジンやボディ部分を除いた足回り機構などのパーツ全体のこと。

――これまで車輌開発エンジニアとして関わってこられた車の中で印象深い車について教えてください。

Zチームに来て最初に関わったイプサムというミニバン、そして現在関わっているプリウスが印象深いです。
イプサムに関わっていたのは1990年代後半で、Zチームに配属され夢中になって仕事に没頭していた若い頃の自分を思い出します。その頃の気持ちをずっと忘れたくないと思っています。

当時、イプサムのようなファミリー向けのミニバンは、運転していて楽しい車ではないという評価が一般的でした。私が主に担当していたのは、操縦安定性と乗り心地といった相反する性能の両立についてで、「ミニバンだって楽しく走りたい」といった声に応えるためにこだわって開発を進めたところ、人気の自動車雑誌などに高く評価していただき非常にうれしかったことを覚えています。

私も自分が開発したイプサムを買いました。3人の子どもがまだ小さく家族でミニバンを使う時期で、自分が作った車に家族が乗ってくれたとても幸せな印象が残る車です。

プリウスはトヨタ自動車の車輌の中でも重要な位置にあり、グローバルに販売されています。19年間のZチームの生活の中で一番長く関わっている車で、私が主に担当するプリウスPHVは、エコカーの中でも最先端といえるシステムを持っています。技術の進歩には終わりがありません。世代を重ねるごとに高度で最先端の技術の世界に入り込んでいくわけですが、今、その先端に位置する車の開発に関われていることはとても印象深いものがあります。

海外出張でアメリカ、ヨーロッパさらにはドバイまで渡り歩く

愛知県豊田市にあるトヨタ自動車本社。2017年の世界生産台数は1千万台を超えた
愛知県豊田市にあるトヨタ自動車本社。2017年の世界生産台数は1千万台を超えた

――海外でも販売される車と日本の国内だけで販売される車とでは、開発の際にどのような違いがありますか?

以前担当していたアイシスは、日本国内専用車種(海外で未販売)でした。リージョン(販売される国や地域)が限られると、その地域での用途や交通ルールに徹底的に合わせた仕様で開発することができます。

一方、プリウスのように海外で販売されるグローバル車は、販売される国それぞれの要望を組み入れながら車作りをします。アメリカでは大きめのボディサイズが好まれますが、日本ではそうではありません。同じ車輌で相反する要求を満たすのは難しいのですが、リージョンの要求を聞きながら開発を進める面白さもあります。

さらに、同じ国であっても地域によって異なる要望が出てきます。アメリカのような大きな国ではよくあることで、車に求めるものがエリアによって違ってくるからです。アメリカ西部では環境に優しい車であることが、東部では雪が降る寒い地域が多いので4WD機能がついていることが要求されます。

もっと細かいことをいうと、実は州の中でも車に求めるものが変わってくるんですよ。カリフォルニア州のサンフランシスコのエリアは所得や環境への意識が高い人が多いシリコンバレーに近いため、テスラや日産リーフなどの完全なEV(電気自動車)、トヨタMIRAIなどの燃料電池車といった最先端のエコカーが好まれます。

――プリウスは世界90カ国以上で販売されているそうですが、車輌開発エンジニアである金子さんが海外に行かれることもありますか?

海外出張は年に5~10回程度あります。プリウスの開発責任者として行くので、アメリカ西海岸やロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークなど、エコカーや環境に優しい車が優遇されている地域が多いです。ヨーロッパだとトヨタの欧州拠点(トヨタモーターヨーロッパ)となるベルギーやスペイン、スウェーデンが多いですね。

あとは、私はガソリンの消費を極力減らそうとしているプリウスの開発者なので意外に思われるかもしれませんが、石油大国であるUAEのドバイに招かれて講演をしたこともあります。UAEは石油産出国として有名ですが、石油を後世に残したいという思いから、環境を重視するモビリティ社会(*2)を政府が推し進めているんです。

*2 モビリティ社会:車が人やコミュニティとつながることによって、移動の手段という従来の役割を超え、安全・安心・環境低負荷をベースに世界中を豊かにしてゆく社会のこと。

自分が開発した車を見かけるとうれしくなり、つい運転手を見てしまう

プリウスPHVの屋根には、量産車として初めてソーラー充電システムを搭載
プリウスPHVの屋根には、量産車として初めてソーラー充電システムを搭載

――最初に買った車について教えてください。

高校・大学時代はバイクに乗っていました。車を買ったのは入社してからで、中古のスターレット(当時のトヨタ車で最も小さな車)を選びました。軽くてきびきびした走りが楽しい車で、赤い色だったので「ロメオ」と名付けて乗っていました(赤はアルファロメオのイメージカラー)。今は自分が開発したプリウスPHVに乗っています。娘はトヨタではなくて、スズキのジムニーに乗っていますよ(笑)。

――街中で自分が開発した車を見かけると、どのような気持ちになりますか?

車は工業製品の中でも非常に特殊な位置にあります。というのも、高速道路や駐車場などさまざまな場所で、自分が作った車が走っている姿、それを運転している人、乗っている人を見ることができるからです。それが車輌開発の面白さの一つです。同じ工業製品でも、例えば家電だと、他人の家の中をのぞかなければ製品が使われているシーンを見ることはできませんからね。

発売されてから間もない時期に自分が開発した車に遭遇すると、わざわざ見に行ってしまいます。「どんな人が乗っているのかな?」と運転席に顔を向けてみたりもします。海外出張に行くと、到着した空港の駐車場でまず自分が関わった車を探してしまいますね。そういうところが車輌開発の特殊なところで、面白さや楽しさを感じる瞬間です。

手塩にかけて自分が作ったものを家族に喜んでもらえたり、街中で多くの人が利用しているのを見かけたりできるエピソードが印象的でした。乗り物は私たちの生活を便利にし、心の豊かさも与えてくれる社会には欠かせないアイテムですので、開発に携わる誇りややりがいは大きいでしょう。

今回は車の開発に関するお話を伺いましたが、車輌開発エンジニアは、バイク、電車、飛行機などさまざまな乗り物の分野に存在しています。乗り物が好きで開発職に興味がある人は、将来の職業として考えてみてはいかがでしょうか。

【参考】
Forbes JAPAN「『最も安全』な2017年型23モデルが判明」
https://forbesjapan.com/articles/detail/14543

CLICCCAR.com「米・IIHS衝突試験で日本車が最高評価を獲得」
https://clicccar.com/2017/12/10/538581/

【profile】トヨタ自動車 ミッドサイズビークルカンパニーMS製品企画ZF プリウスPHV主査 金子將一(かねこ しょういち)

トヨタ自動車株式会社 https://toyota.jp/





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