今日から開催!お中元ギフト解体「もったいないセール」で食品ロス削減を報じるメディアに知って欲しいこと – Yahoo!ニュース 個人

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2018年5月16~22日、東京都内の百貨店、松坂屋上野店で、もったいないセールが開催される。正規ルートで販売できない理由あり食品などが特別価格で提供される。毎年メディアが「食品ロス削減」の一つとして報じている。

松坂屋上野店で開催される、この「もったいないセール」は、2010年からスタートした。2017年には5月末から6月上旬にかけて開催されており、理由あり食品のほか、特価品など、合計約3500種類、18万点が開催前に準備されたそうだ(流通ニュース2017年5月29日付の記事より)。

賞味期限が近づいたものでも、価格が安ければ喜んで買う、という消費者は多い。だが、実際には、賞味期限ギリギリまで売るのが難しい食品業界の事情がある。

賞味期限の手前に「販売期限」と「納品期限」があり、年間1200億円以上のロスが生じている

食品業界には、緩和されつつあるものの、依然として「3分の1ルール」という商慣習が残っている。諸説あるが、日経MJ(日経流通新聞)がかつて特集した記事によれば、1990年代に、大手スーパーマーケットが設定し、それに他の小売が追随したと言われている。

「3分の1ルール」とは、賞味期間(製造日から賞味期限が切れるまでの期間)全体を、均等に3分の1ずつに分け、賞味期限の切れる3分の1手前で販売期限が切れ、その3分の2手前で納品期限が切れるというものだ。

3分の1ルールの概念図(流通ニュース 2017年5月29日付記事より引用)
3分の1ルールの概念図(流通ニュース 2017年5月29日付記事より引用)

消費者には見えないところで、この2つの関門(販売期限と納品期限)がある。販売期限が切れると棚から撤去されてしまうため、賞味期限が切れるギリギリまで売ることが難しいのだ。

たとえば、賞味期間が1年間(12ヶ月)の食品があるとする。製造してから3分の1(12ヶ月の3分の1)である4ヶ月が納品期限だ。納品期限までに、小売店などに納品しなければならない。海外で製造して輸送するなどで遅れてしまったら、もう納品できない。

次に、製造してから3分の2(12ヶ月の3分の2)である8ヶ月が販売期限だ。小売店は、ここまでに売り切る。商品棚に残っていたら、撤去する。

3分の1ルールの概念図(筆者作成)
3分の1ルールの概念図(筆者作成)

納品期限は、先進諸国ではもっとゆとりがある。上の図で示すように、アメリカでは2分の1、イタリアなどのヨーロッパでは3分の2、イギリスでは4分の3まで受け入れている(流通経済研究所調べ)。納品期限の存在により、返品・廃棄される食品の無駄は839億円。販売期限によるロスの396億円と合わせると、年間1,200億円以上もがロスになっている(流通経済研究所調べ)。ちなみに、この「3分の1ルール」は、法律ではなく、義務ではない。単なる業界の商慣習だ。とはいえ、バイイングパワー(販売力)を持っている小売に従わざるを得ないメーカー(製造者)という構図があり、逆らうのは難しい。

省庁や食品業界の努力で緩和されつつあるものの、全国的にはまだまだ途上

2012年10月に発足した食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム(加工食品の商慣習に関する検討会)は、4年間、毎年開催され、大手スーパーマーケットやコンビニエンスストアの一部では、これら納品期限や販売期限が緩和される動きとなった。

とはいえ、全国的に見ればまだまだだ。中には3分の1どころか「4分の1」や「5分の1」などの厳しいルールをメーカーに課している小売店がいる。全国で講演をするたびに、メーカーの方から直接、同様の話を聞いている。メーカー自身は小売店に「売って頂く」立場であり、数ある競合商品の中から「選んで頂く」立場なので、なかなか強いことは言えないのが現状なのだ。

農林水産省と経済産業省は、2017年5月9日付で「食品ロス削減に向けた加工食品の納品期限の見直しについて(通知)」を出し、さらなる改善につなげるよう、努力をしている。

3年先の賞味期限なのに「ギフト解体セール」で売られている

筆者も、2018年1月の年明けに、ある百貨店の「ギフト解体セール」で買ってきた。

ある百貨店で2018年1月初めに開催されたギフト解体セールで買ってきた食品(筆者撮影)
ある百貨店で2018年1月初めに開催されたギフト解体セールで買ってきた食品(筆者撮影)

ごま油の賞味期限は「2020.01.09」。まだ2年も先だった。うなぎの蒲焼きの缶詰もあった。賞味期限は「2020.4.1」。賞味期限が切れるまで2年以上あった。さばの缶詰に至っては「2020.12.1」で、3年近くも先のものだった。

賞味期限がずっと先でも、半額以下に値下げして売られる背景には、複数の理由が考えられる。前述のような「販売期限」や「納品期限」が切れてしまったもの、在庫が溜まっていて思うように売れていかないもの、「改訂品」と言って、ボトルやパッケージなどのデザインが変わったりフレーバーが変わったりして「旧品」となってしまったもの、季節商品で来年まで売れる見込みがないもの(たとえば正月用の鏡餅、バレンタインデーのチョコレート、など)、商品を入れていた段ボールに破れが生じてしまい流通できないもの、ある店舗で取り扱い中止になってしまったもの、ある企業で取引停止になってしまったもの・・・ほかにも理由は挙げられる。

店頭で食品を選ぶ消費者(画像:iStock)
店頭で食品を選ぶ消費者(画像:iStock)

メディアは「Reduce(リデュース)」が最優先であるときちんと報じて欲しい

松坂屋上野店は、このようなセールの先駆者だ。ほかにも似たような取り組みはあるが、メディアに取り上げられた回数は、百貨店の中ではトップだと思われる。

百貨店以外にも、最近では、外食店で余ったものを、スマートフォンのアプリを通じて購買者へと繋ぐ「TABETE(タベテ)」や「Reduce GO(リデュース・ゴー)」などのサービスも出ている。

このような、余ったものを生かすのは、環境の原則「3R(スリーアール)」のうち、2番目の優先順位である「Reuse(リユース:再利用)」に相当する。3番目は「Recycle(リサイクル:再生利用)」。1番目の優先順位は「Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)」だ。

びん再使用ネットワークの公式サイトに掲載されている「3Rの優先順位」がわかりやすい。京都大学名誉教授で環境漫画家の、高月紘(たかつき・ひろし)先生のイラストは、一目で3Rの優先順位を理解することができる。

「余ったら安売りするか誰かにあげるかすればOK」は安直

「余ったら、安売りすればいい」とか「誰かにあげればウィンウィンで万々歳」という安易な考え方があるように感じている。メディアが積極的に松坂屋上野店の取り組みを取り上げて、食品ロスの現状や解消方法の一つとして報じるのはいいが、同時に、Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)、すなわち「作り過ぎない」「売り過ぎない」「書い過ぎない」が大前提で最優先であることをきちんと視聴者や読者に伝わるよう、報じて欲しい。「余った、安く売った、みんなハッピー、一件落着、オッケー」のような軽いノリが感じられて仕方がないのだ。消費者がカゴいっぱいに大量に買い込んだ山のようなカニ缶は、家の中でちゃんと消費されたのか、わからない。食品ロスのある場所が、店から家に移動しただけでは意味がない。

2030年までに世界で達成すべきSDGs(持続可能な開発目標)の12番目のゴールは「つくる責任 つかう責任」

2015年9月、国連サミットで採択されたSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)。2030年までに世界で達成すべき17のゴール(目標)が定められている。

2015年9月、国連サミットで採択されたSDGs(エスディージーズ、持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)
2015年9月、国連サミットで採択されたSDGs(エスディージーズ、持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)

このうち、12番目が「つくる責任 つかう責任」だ。

SDGsの12番目「つくる責任 つかう責任」(国連広報センターHPより)
SDGsの12番目「つくる責任 つかう責任」(国連広報センターHPより)

食品を工業生産し、全国へ流通させる場合、どうしてもロスは出ざるを得ない。だが、先に述べた「3分の1ルール」の緩和のように、改善し、ロスを最小限にする取り組みは可能だ。「ロスをバンバン出して、安売りして余ったら捨てれば、その方が経済が回る」という意見をよく聞くが、それは昭和の考え方で、SDGsにはそぐわないことを述べておきたい。ロスを減らしながら売り上げを1.5倍に伸ばした元気寿司のような事例もある。

メディアの方々には「Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)」が最優先で、適量を作り、適量を売り、適量を買うスタイルが先進国の責務である、と認識して報じて頂きたいと願っている。





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