【アジア取材ノート】 ベトナムで「循環型経済」を目指す動き アップルやHP先導で機器回収がスタート – NNA.ASIA

Home » ショップ » バイク » 【アジア取材ノート】 ベトナムで「循環型経済」を目指す動き アップルやHP先導で機器回収がスタート – NNA.ASIA
バイク コメントはまだありません



ベトナム社会にとって喫緊の課題の一つにごみ処理問題がある。市民、行政、経済界が一体となって取り組む必要がある中、製品を消費して廃棄処分する「直線型経済」から、リサイクルして再利用する「循環型経済(サーキュラー・エコノミー)」を目指す動きが出てきた。廃棄物処理の問題を経済の力で解決するための課題と商機はどこにあるのか。

(京正裕之=文・写真)

アップルやHPが資金提供するプロジェクト「ベトナム・リサイクルズ(VRP)」では、電子機器の廃棄物を無償で回収している=18年3月

アップルやHPが資金提供するプロジェクト「ベトナム・リサイクルズ(VRP)」では、電子機器の廃棄物を無償で回収している=18年3月

ベトナムの首都ホーチミン市内に設置された緑色の箱で、スマートフォンやタブレット、パソコン(PC)などが無償で回収されている。箱の設置と回収資金を提供しているのは、米アップルとヒューレット・パッカード(HP)だ。2015年に設置し始め、同市とハノイに5カ所ずつ計10カ所ある。アップルの広報担当者は、「この取り組みは、アップルがクローズド・ループ(循環型)サプライチェーンを目指している活動の一環だ」と説明する。アップルは世界的に自社製品を回収していて、例えばスマホ「iPhone(アイフォーン)6」専用の分解装置「リアム」を使うことで年最大240万台を分解でき、リサイクルしたアルミニウムをPC「MAC mini」に使っている。ベトナムには製品の回収拠点でもあるアップルストアがなく、アップルとHPが毎年資金を提供するプロジェクト「ベトナム・リサイクルズ(VRP)」が担当する形になっている。

VRPは、ドイツ系のリバース物流会社リバース・ロジスティクス・グループ(RLG)ベトナムが運営する。電子機器廃棄物(Eウェイスト)を回収して契約するリサイクル工場へ運び、分解した後にプラスチックや金属などの二次資源を業者へと売却している。

VRPは15年以降、毎年「リサイクルデー」のイベントを開催し、二大都市の住宅地を回ってEウェイストを回収するなど、市民への啓発活動に力を入れている。VRPは17年に9トンのEウェイストを回収した。

だが、この量は環境ビジネスに詳しい関係者が「2桁か3桁数字が違うのではないか」と指摘するほど少ない。VRPを担当するRLGのグエン・フオン・タオ氏も「希少価値の高い二次資源は、あまり回収できていない」と話す。調査会社ニールセンによると、ベトナムの17年のスマホ利用率は84%を超えている。地元紙が引用したハノイ科学技術大学のリポートでは、年10万トンのEウェイストが排出されている。

タオ氏は、Eウェイストの回収が進まないのは、ベトナムでは一般家庭のごみの分別も定めがないため、廃棄物処理に関する教育が不足していることや、リサイクルするよりも中古品として売却する「リユース」の意識が強いからだと指摘する。これらは非公式経済の廃棄物回収業者などが買い取る仕組みができている。

■決定後も課題山積み

アップルが回収ポイントを設置したのは、企業理念だけが理由ではない。使用済み製品の回収を定めた首相決定16号に従っているからだ。同決定は日本の「家電リサイクル法」に相当する。昨年11月に同決定の施行細則に当たる通達34号が公布され、運用は本格化する。決定16号は家電に加えて自動車・バイクも含まれ、生産者や輸入者が、対象となる廃棄物の回収場所を設け、自社でリサイクルをするか業者へ届けることが定められている。

スマホなどの中古機器を買い取って販売する人たち=ホーチミン市

スマホなどの中古機器を買い取って販売する人たち=ホーチミン市

だが、制度自体に課題も残る。ある業界関係者は「回収場所にはほとんど集まっていない。メーカーは環境保護のために対応しているが、回収の枠組みに家電量販店などのディーラーが含まれていないことが難しくしている」と指摘する。また日本の家電リサイクル法と決定的に違うのは、回収費用がメーカー負担となっている点だ。携帯電話などの有価物は中古市場に流れて回収が進まない一方、乾電池など廃棄される製品を扱うメーカーは負担が出る。回収率の目標こそ定められていないが、価値の異なる品目を同一に扱う制度は整合性が取りにくいという。別の関係者は、「廃棄物の回収は物流の勝負。リサイクルの浸透は物流業界の発展が重要になる」と言う。日本のように消費者が家電を購入した際に、販売店などが使用済み製品を回収していく「リバースロジスティクス」の仕組みが、物流会社を巻き込んでどこまで構築できるかが課題だ。

■日系リサイクル業者がベトナムでエコタウン構想

廃棄物リサイクルなどを手掛ける市川環境エンジニアリング(IKE、千葉県市川市)が、ベトナムで都市ごみ(一般廃棄物相当)や産業廃棄物などを総合的に処理するミニエコタウンの建設に乗り出す。

日本の廃棄物処理技術はニーズがある」とIKE加賀山氏=ハノイ

日本の廃棄物処理技術はニーズがある」とIKE加賀山氏=ハノイ

IKEが構想しているエコタウンは、◇都市ごみ、産業廃棄物の分別や焼却◇産業排水の処理◇医療系廃棄物の処理◇廃油のリサイクル◇RPF(固形燃料)製造などの廃プラスチックリサイクル─などを一つの施設で行う廃棄物処理コンプレックスになる。

ベトナムの都市ごみは大半が埋め立て処分となり、全国的に焼却処理が進んでいない。一方で、廃棄物処理施設が各省市から受け取る都市ごみの処理費が安く、収益性が乏しいため、民間企業としては参入しづらいという。IKEがコンプレックスを設けるのも、都市ごみの安い処理費をカバーするためだ。

IKEの執行役員ベトナム事業推進チームリーダーの加賀山保一氏は、「各省とも廃棄物処理について本当に頭を悩ませ、埋め立ても待ったなしの状況だが、われわれも利益は度外視できない。ただ、国内総生産(GDP)成長率が毎年6%程度で推移する中で、今後も処理費が上がらないのは考えにくい」と話し、相互利益があるビジネスモデルを構築させたい考えだ。向こう2~3年で1件を着工し、5年以内にベトナム事業を10億円規模へ拡大させる計画を進める。

※特集「アジア取材ノート」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2018年4月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。





コメントを残す