角野卓造 過ぎ去ったことは「万事正解!」と思っている – ニフティニュース

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 1990年に始まったドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)は、今年で28年目を迎える。家族をめぐる悲喜交々の人生ドラマに、自分を重ね合わせる人も少なくないと思うが、中年男性の共感を誘う人物といえば、「小島勇」をおいて他にないだろう。妻(泉ピン子)と姑(赤木春恵)にはさまれた中間管理職のような存在で、必死に「中華 幸楽」を守ってきた男──。熱演するのは他でもない、名門劇団・文学座の俳優、角野卓造(69)である。

「皆さん、私に小島勇のイメージを持っていらっしゃるかもしれませんが、本当の私は違いますよ。家では亭主関白だと断言しておきましょう」

 と角野は嘯くが、伴侶は同じ文学座の女優、倉野章子。1歳年上で、文学座の四期先輩を妻に娶ったのが30歳の時。来年には結婚40周年を迎える。

 先輩で年上女房とくれば、世間的には「尻に敷かれている夫の図」しか想像できないが、亭主関白を続け、しかも夫婦円満であり続ける秘訣はあるのだろうか。

「他のご夫婦のことは知りません。ただ、私たちに関して言えば、どちらも『ひとり上手』ということですかね。一緒に過ごすのは、食事の時ぐらい。食べ終えれば自室に移動します。結婚した当初は、かみさんも戸惑ったかもしれませんが、もう諦めたのかな。今ではかみさんも自分の趣味をいくつも持って、人生を楽しんでいるようです」

『渡る世間は鬼ばかり』では、「おやじバンド」を結成し、見事なギターの腕前と美声を披露しているが、実はギターは、角野の趣味のひとつだ。角野はこれだけでなく、「ひとりでできる」趣味を多数持っている。例えば旅もひとり。居酒屋めぐりもひとり。角野の部屋には、レコード、CD、DVD、プラモデル、雑誌、本……と「ひとり」で楽しむアイテムがびっしりと並ぶ。

 中でも最近はまっているのが「ひとり家呑み」である。

◆デパ地下に顔を出します

「自慢じゃありませんが、365日、お酒を欠かしたことがございません。居酒屋でひとり呑むのもいいもんですが、数年前から家呑みが増えました。文学座の稽古場から自宅までのちょうど中間に、伊勢丹新宿本店がありましてね。地下1階のいわゆるデパ地下に、多い時は三日に一遍顔を出します。伊勢丹の食品売場の従業員の方とはすっかり顔馴染みになってしまいました」

 デパ地下をぐるりと回って総菜を買う。それを京都で買い求めた洒落た豆皿に盛って、酒を呑みながらつまむ。

「もちろん、妻と二人で家呑みすることも多いのですが、先日は夕方4時から夜の8時まで、ひとりで家呑みを楽しみました」

 自分の好きな肴と自分の好きな酒を自分の好きなタイミングで楽しむ。誰からも束縛されない“自由”なひとときだ。角野は、この“自由”を満喫したくて、ひとりで呑む。

「ワガママなんですよ。『オレはこういう風にしかできねぇや』って69年、生きてきましたから。自分の人生、誰かに指図されるなんてゴメン被りたい」

 だが人生は、自分の思い通りになることなど稀だ。ましてや俳優という商売は、制約も多く、ままならないことも多いのではないか。

「人生、過ぎ去ったことは『万事正解!』と思っているんです。『人生の岐路に戻ってそこからやり直したい』と口にする人がいますが、私はそう思わない。面倒だし、うまくいくとは限らない。『あの時ああしていれば』と悔やんでストレスを溜めるより、自分の歩んできた人生、万事正解! と肯定したほうが、気分がいい。だって、いろいろな出合いとか、選択とか、偶然とか、そういうことが重なり合って今があるんだから。そんなに胸張れる人生かって? いいんです、自分が楽しけりゃ。他人は関係ありません」

 角野は役者人生を振り返った初エッセイを今秋、上梓する。

「好き勝手書いております。『こんな生き方で楽しくやってる奴がいるんだな』と、読んで気持ちを楽にしてもらえたら嬉しいですね。読んだら正解? そんなこと、知りません(笑い)」

【PROFILE】かどの・たくぞう/1948年8月10日、東京都生まれ。学習院大学経済学部卒業後、文学座附属演劇研究所(10期)を経て、文学座座員となる。以降、舞台、テレビ、映画、吹き替えなどジャンルを問わず幅広く活躍。2008年の紫綬褒章をはじめ受賞歴多数。最近では「ドコモ」CMなどでもお馴染み。現在も文学座に所属し、今秋、居酒屋の流儀や60代からの生き方、役者人生などを振り返った初エッセイを上梓する予定。

●撮影/二石友希 取材・文/角山祥道

※週刊ポスト2017年9月22日号





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