規制破壊は善か? 加計を不当優遇 実態無視の空論 食農守る固い岩盤を 法政大学教授 山口 二郎 – 日本農業新聞

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山口二郎氏

 東京都議会選挙における自民党の大敗とそれに続く内閣支持率の急落によって、政治の雰囲気は大きく変わった。安倍1強体制は音を立てて崩れているようである。世論調査によれば、安倍政権を支持しない理由として、首相の人柄を信頼できないとするものが6割にも上っている。目先をかわすような内閣改造では安倍離れは簡単に止めることはできないように思われる。
 

加計を不当優遇

 安倍政治に対する不信を高めた最大の理由は、加計学園の獣医学部開設に対する不当な優遇にある。この一件は、国家戦略特区という経済政策そのものの問題点を明らかにしたように思われる。獣医学部の新設は、岩盤規制に穴を開ける改革として喧伝された。

 安倍政権の見解によれば、獣医師会が過当競争を防ぐために獣医師の増加に反対し、文部科学省や農水省がこの既得権を守ることに加担してきたそうである。規制改革の旗を振る経済産業省を中心とする官僚(およびそのOB)と経済学者は、やみくもに規制を取り払い、自由な競争をさせれば最適な資源配分が実現すると信じている。現状では、獣医師の数は全体として不足していないが、地域的な偏在や大型動物を扱う獣医師、地方自治体の獣医師資格を持つ公務員の不足という問題はある。そこで、獣医師の供給を一挙に増やし、全体の所得水準を下げれば、待遇の悪い地方や自治体で働く獣医師も増えるという理屈である。

 

実態無視の空論

 獣医学部の新設とコンビニエンスストアの出店を同列に扱う議論の粗雑さには、あきれるばかりである。獣医学部の教育、研究には大きな費用がかかり、国費からの補助も注入される。研究者の層が厚いわけでもない。安倍晋三首相が苦し紛れに言った、意欲のある大学は全国的に新設を認めるという路線は、まさに政策実現のコストを無視した空論である。

 獣医学部の新設が経済成長を促す起爆剤になることなどあり得ない。加計学園疑惑は、岩盤規制の破壊というスローガンが、新たな腐敗や特権を生むことを教えた良い教材となった。

 今まで、農業、雇用、医療は岩盤規制の典型分野とされ、競争万能主義の官僚や学者はさまざまな「改革」を画策してきた。もちろん、人口減少、農業の担い手の減少などの大きな社会構造の変化に対応した政策の見直しは必要である。しかし、規制改革の美名の陰で、公共的な財産を私物化し、新たな金もうけの種にするという動きには注意しておかなければならない。

 自然環境の保全、食料の安定供給などの価値は、百年単位の時間幅で考えるべきであり、今この瞬間の金もうけのために破壊してはならない。安倍政治が行き詰まる中、別の選択を作り出すことが野党や自民党内の挑戦者の任務である。その際には、地域の実態を直視し、農業や医療に関する法制など、自然と人間を守るための制度的な基盤を確立するための構想が不可欠である。岩盤で何が悪い。人間が立つためには固い地盤が必要である。

<プロフィル> やまぐち・じろう

 1958年岡山県生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学教授などを経て2014年に現職。現実政治への発言を続け、憲法に従った政治を取り戻そうと「立憲デモクラシーの会」を設立。近著に共著『歴史を繰り返すな』。

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