日欧EPA 罪重い決着 米国圧力かわせるか 慶應義塾大学教授 金子 勝 – 日本農業新聞

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金子勝氏

 日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)交渉で大枠合意した。だが、今回の日欧EPAは日本農業にとって環太平洋連携協定(TPP)以上に厳しい合意内容が含まれているのにもかかわらず、TPP以上に秘密主義で、交渉内容についてまともに議論さえ行われなかった。政府は、TPPの承認でもう議論などしなくてよいと考えているかもしれないが、それは大きな誤りだ。
 

影響はTPP超

 日欧EPA大枠合意を見ると、TPPよりもひどいのは乳製品だ。ソフトチーズなどチーズで3.1万トンの輸入枠を設定し、16年目には関税を撤廃。脱脂肪乳・バターは6年間で生乳換算1.5万トンまで関税を下げる。畜産はTPPと同水準だ。豚肉は、低価格帯にかける従量税を10年で現行1キロ当たり482円から50円まで引き下げ、牛肉は16年で従価税を38.5%から9%に引き下げる。

 これにより酪農、畜産に深刻な影響を及ぼしかねない。チーズやバターの関税撤廃・引き下げは生乳の売り先をなくすからだ。特に北海道の酪農の被害が大きいが、北海道の生乳がその分、飲用向けに本州で販売されれば、値崩れが起きる可能性がある。秘密交渉で決着した罪は重い。

 それだけではない。安い豚肉の流入は米にも影響が波及しかねない。政府は米の生産調整見直しで飼料用米に補助金を出す政策を推進しているが、豚肉や牛肉の関税の大幅引き下げにより、大量の豚肉や牛肉が輸入されれば、肝心の飼料用米の売り先がなくなってしまう。

 

2国間迫る契機

 問題はこれにとどまらない。日欧EPAの大枠合意を契機に、トランプ米大統領はより強く日米2国間貿易交渉の圧力を強めてくるだろう。トランプ政権はロシアゲート事件で一層苦しい立場に追い込まれているからだ。来年の中間選挙で、もし与党の共和党が敗れると、弾劾の手続きが始まる可能性が出てくる。中間選挙で勝つには、「自国中心主義」を掲げた以上、自国に有利な貿易協定を締結することが“至上命題”になってくる。

 トランプ政権はTPPから離脱し、北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉を打ち出している。ドイツで今月開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合の際、トランプ大統領は安倍晋三首相との会談で、米国の対日貿易赤字の是正が必要との認識を伝えた。日米2国間貿易交渉を要求してくるのも時間の問題だろう。

 そこでトランプ政権は、TPP以上、日欧EPA以上の「譲歩」を日本側からもぎ取ることが不可欠になってくる。安倍政権がとても踏み応えられるとは思えない。懸念は広がるばかりだ。

<プロフィル> かねこ・まさる

 1952年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2000年から現職。制度の経済学など専攻。著書に『金子勝の食から立て直す旅』(岩波書店)など。近著に『日本病 長期衰退のダイナミクス』(岩波新書)。

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