チケット転売、なぜ問題? 数十倍に高騰も – 日本経済新聞

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 人気アイドルグループのコンサートに行きたいのに、チケットがなかなか取れないわ。ネットをみると高額で転売されているけど、どうにかならないの?

 チケットの高額転売について、植木樹理さん(40)と岸雅子さん(52)が石鍋仁美編集委員の話を聞いた。

 チケットの高額転売が問題になっていますね。

 「1枚1万円弱のアイドルグループのコンサートチケットが、ネット上で数万~数十万円で売られています。特にここ1、2年、転売専門サイトが複数登場し、スマートフォン(スマホ)が普及した結果、普通の人が手軽に売買できるようになったことで、高額転売が目立つようになりました。こうした状況に危機感を持った芸能事務所の団体である日本音楽制作者連盟やコンサート主催者の団体であるコンサートプロモーターズ協会などは昨年夏、100を超すアーティストとの連名で全国紙に高額転売反対を訴える意見広告を出しました」

 業界はなぜ反対しているのですか。

 「まず、ファンに本来より高い出費を強いることになるからです。さらに、音楽市場の収益源がCDなどの『パッケージソフト』から『ライブ』に移りつつあることも背景にあります。日本レコード協会によると、音楽ソフトの生産額はピークだった1998年に6074億円ありましたが、2015年は2544億円に縮みました。一方で、ぴあ総研によると、音楽ライブ市場は15年に3405億円と前年比25.2%増え、11年に比べ2倍以上に成長しました。ソフト市場とライブ市場の規模は14年に逆転し、15年にはさらに差が開いた形です」

 「ポピュラー音楽ビジネスでは長いあいだ、コンサートはレコードやCDの宣伝の場という性格を持っていました。CDが売れなくなると、ライブそのもので収益を上げなければ音楽活動が成り立ちません。しかしチケット単体では値上げしにくいので、ライブ会場でパンフレットやタオルなどグッズを売って収益の足しにしてきました。高額転売されたチケットを買ったファンは、グッズを買う資金余力が減ってしまいます。こうしたこともあり、高額転売反対キャンペーンが始まったのです」

 「2020年には東京五輪もあります。高額転売問題は音楽だけでなくスポーツも同じ。仮に東京五輪のチケットがあっという間に買い占められ、高額転売されるようでは国際問題になりかねません」

 業者による転売もあるようですが。

 「実態はよくわかっていません。古物営業法では『営業』としての中古品の販売は都道府県の許可が必要です。16年9月にはチケット転売で1000万円を売り上げたとして20代の女性が古物営業法違反で逮捕されました。しかしどこからが『営業』かは曖昧です。公共の場でチケットを転売するダフ屋行為は都道府県が条例で取り締まっている場合が多いのですが、ネットは今のところ『公共の場』とはされていません」

 「米国では州によって高額転売を州法で規制しています。コンピューターのプログラムによる大量買い占めも取り締まりの対象です。しかしネットでの転売に対して州単位の規制は事実上、効力が薄いのも事実です」

 「経済学者の中には『超高額でも買いたい人がいるなら、それに合わせて発売価格を上げればいい』という人もいます。しかし少年少女向けのアイドルコンサートの席を主催者自身が何十万円という価格で売り出すのは難しいでしょう。社会的に非難されたり、反感を買ってファンを減らしたりする可能性が高いと思われます」

 解決策はありますか。

 「スマホを使った電子チケットは解決策の一つです。転売防止や無効化などが簡単になります。しかしスマホを持たない人はどうするかという問題は残ります。顔写真を登録しておき、入場時に照合する例も出始めていますが、家族や友人に譲ることもできないのがネックです」

 「まず、個人が本当に病気や仕事で行けなくなった場合と、最初から転売目的で大量に買い占める動きを区別するところから始めるべきです。ニセモノを排除し、公正で価格も適正水準な公式の転売サイトを、音楽業界が設けてはどうでしょうか。そのうえで買い占めも含む高額転売の対策に乗り出さないと、音楽ファンに支持されるのは難しいでしょう」

■ちょっとウンチク
米には公式市場、価格も安く
 音楽ライブに演劇、スポーツも加えた日本の興行チケットの1次市場(当初売り出し分)は約6000億円。これに対し2次(転売)市場は300億円から500億円に達したとされる。
 エンターテインメント先進国の米国では1次市場の2兆円に対し2次市場が3割近い6000億円に膨らんでいるという。スポーツ界や一部の音楽界が、転売業者を公認するなどの形で公式の転売市場を設けた効果が大きい。急な用事の時は安心して転売でき、時間が空いたときには開催直前の売れ残りチケットを安く買える。消費者に歓迎されて当然だ。
 価格はほぼ一律で座席指定も転売もキャンセルも不可。会費を支払いファンクラブなどの会員になってもどの席が買えるかわからない。そんな現在の硬直的で不透明なチケット流通の問題点を音楽業界も自覚しつつある。アーティストの収益になるなら舞台に近い席が高くなってもいいというファンも多い。チケット流通のあり方は遠からず大きく変わりそうだ。
(編集委員 石鍋仁美)

■今回のニッキィ
植木 樹理さん メーカー勤務。最近、100円ショップで売っている収納グッズを使った整理整頓にハマっている。「気軽に大量に買えるところがいいですね」
岸 雅子さん フリーのコピーライター。趣味としてJポップやジャズ、ラテン音楽などをピアノで演奏する。「バンドで演奏中は無心になれるところが魅力です」

[日本経済新聞夕刊2017年1月23日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は2月6日の予定です。

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