ライカM10で蘇るオールドライカレンズ達 – デジカメ Watch

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ライカレンズの魅力を探る本連載。いつもの現行レンズではなく、今回は番外編として昔のライカレンズを取り上げてみたい。

なぜ、ライカMレンズはライカMデジタルで活きるのか

この連載ではずっと現行レンズばかり取り上げてきたのに、どうして今オールドライカレンズなのか?という疑問もあるだろうが、それはやはりライカM10が登場したことが大きい。

一眼レフカメラに比べてフランジバックが短いミラーレスカメラが各社から登場したことで、マウントアダプターさえ用意すればオールドライカレンズを各社のミラーレス機で楽しむことがすっかり一般化してきたわけだが、それらは単に「ライカレンズを取り付けて写せる」という話であり、ライカレンズの持つ個性や素性が必ずしも画像に正しく反映されているとは言い切れない。なぜなら古いライカレンズは、当然だがフィルムで使われることを前提に設計されており、そうした設計のレンズをデジタルで使っても、イメージセンサーへの光線の入射角度やもろもろの問題のために、フィルムで使ったときとはまた別の結果になるからだ。

ところがライカの場合は、初代デジタル機のライカM8からイメージセンサーの受光特性を可能な限りフィルムに近づけることに心血を注いでいて、その「フィッティング具合」はライカM8→ライカM9→ライカM(Typ240)と代を追うごとに進化。最新のライカM10ではかなりのレベルに達しているのだ。もちろん、それでもフィルムの特性と完全に一致するわけではないが、他のミラーレス機と比べ、もっともライカMレンズの素性を正確に再現できるデジタルカメラなのは間違いない。

デジタルのM型に使われているイメージセンサーは、ライカM8から最新のライカM10に至るまでいわゆる”汎用品”ではなく、「ライカMデジタル専用」に設計・製造されたデバイスだ。ドイツ・ウェッツラーで行われたライカM10のローンチパーティ会場でたまたま立ち話ができた技術者によると、その”専用設計”の度合いはハンパでなく、センサーの前面に配置されるマイクロレンズのオフセット角度から、一説によると1mm以下という極薄のカバーガラスまで、とにかく通常のデジタルカメラ用センサーとは色々な面でかなり違うようで、これを作れるセンサーメーカーは限られるとのこと。

そのことはライカMデジタルの各モデルが一般のデジタルカメラより高価になってしまう理由のひとつにもなっているわけだが、逆にそれだけ自社の新旧レンズに対する丁寧なフォローが確保されているわけであり、ライカならではの他社にはないコダワリとも言える。

やっぱりお似合いのルックス。JPEG画質の向上もポイント

サイズ感のイメージ。左からライカM10(2017年)、ライカM4(1967年)

ライカM10についてはボディがフィルム時代のM型ライカ並みに薄型化されたことで、現行品にくらべ小型軽量なものが多いオールドライカレンズとのルックス的な相性が良くなったこともグッドニュースだが、さらにもうひとつライカM10を推す理由はJPEG画質が向上したことだ。

ライカM8やライカM9の頃のJPEG画質は、RAWに比べてかなり解像感がスポイルされていたので、どうしてもRAWで撮って現像ソフトを使ってJPEGに書き出すことをお勧めしていた。しかし2012年登場のライカM(Typ240)では格段にJPEG画質が上がり始め、今回のライカM10ではさらに良くなっている。現像時に色味や階調がどうにでもなるRAWとは異なり、メーカーの考える画作りはJPEGの方が反映されやすいという現実面を含め、JPEG画質がより実用的になっているライカM10でレンズの描写を楽しむというのは、ある意味でとても理に適っている。

その昔、”ライカ原理主義者”の間では「ライカで撮影したフィルムをプリントするときはフォコマート(ライカ純正の引き伸ばし機)を使わなくてはならない」といったような話題があったけれど、その論で考えると、ライカ純正の画処理であるJPEGが実用的になるライカM10で楽しむオールドライカレンズの「ライカ純正度」は、かなり高めということになる。もちろん、今回の撮影はすべてJPEGで、シャープネスやコントラストなどのパラメータはすべてデフォルトのまま。ホワイトバランスもすべてAWBの、いわゆる「撮って出し」状態である。

ズミクロン50mm F2(スクリューマウント)

ライカの50mm F2レンズは1933年のズマールに始まり、1939年のズミタールと続き、その次が1953年に登場したズミクロンとなる。ズミタールと同じ7枚構成だが、当時性能が上がってきたコーティング技術を活用することで貼り合わせ面を減らし、貼り合わせから解放されたレンズ面の曲率を微妙にコントロールすることで収差を減らす”空気レンズ”のアイデアや、ランタンクラウンガラスを始めとする高屈折系ガラスを贅沢に投入したことで、それまでの50mm F2レンズとは次元の異なる高解像性能を実現している。

本レンズはスクリューマウントとMマウントの両方あるが、筆者のズミクロンは昔にライカIIIfとセットで購入したスクリューマウントタイプ。その後、IIIfは売ってしまったが、レンズだけは手放せなかった。前玉には無数の拭きキズがあったりして決してコンディションは最高ではないが、この時代によくぞここまで!と思えるほど写りは良く、個人的には当たりのレンズだと思っている。シリアルナンバーから判断すると1956年製の個体のようだ。

約64年前に設計された立派なオールドレンズだが、ライカM10との組み合わせでは想像以上に現代的な写りで、ズミタールに比べると絞り開放から合焦部の解像感はかなり高い。とはいえ、現代レンズのようなスパッと切ったような鋭利なエッジではなく、ごく僅かなフレアを伴った柔らかいエッジ描写なのが昔のレンズらしい。

ほぼ最短撮影距離の1mで撮影。絞り開放でも合焦面の高い解像感はさすがズミクロンと感心する一方で後方のボケ味はかなり賑やかでややガチャガチャした印象となる。もちろん、この賑やかさがむしろ面白いわけだが。LEICA M10 / ISO100 / F2 / 1/2,000秒 / AWB / JPEG

F5.6まで絞って撮影。ここまで絞ると周辺部の像の乱れはほぼ無くなり、画面全体で高い解像感が得られる。コントラストも十分に高く、あまりオールドレンズらしくない欠点の少ない写り方だが、現代レンズのようなピーキーなエッジの立ち方ではなく、どこか落ち着いた描写だ。 LEICA M10 / ISO200 / F5.6 / 1/1,000秒 / AWB / JPEG

ズミクロン35mm F2 (Mマウント)

初代ズミクロン35mmは通称「8枚玉」と呼ばれることからも分かるとおり、6群8枚構成で、絞りを挟んだ前後のレンズ群がほぼ対称形になった光学系を採用。1958年に登場したレンズなので、今から約59年前の設計ということになる。前述の初代ズミクロン50mmに比べると5年も設計は新しいのだが、同じズミクロンというレンズ銘でも描写の特徴はかなり異なり、簡単にいうと50mmズミクロンに比べ絞り開放ではかなり甘い描写で、当時は広角レンズの性能を上げることがいかに難しかったのかということがよく分かる。

今回使用したのはライカM3用のいわゆる「メガネ付き」とか「ゴーグル付き」と言われるタイプ。ライカM3以外のM型ライカは一部の例外を除くほぼ全てが35mm用のブライトフレームを備えているのでメガネやゴーグルは不要だが、最広角が50mmフレームまでのM3では50mmのブライトフレームを35mmの視野まで拡大するために、このようなアタッチメント付きの35mmレンズが用意されていた。もともと35mmのブライトフレームを持つライカM10には、メガネ無しの通常タイプのズミクロンの方が大きさや重さを考えると好相性なのだが、最短撮影距離は通常タイプが70cmまでなのに対し、メガネ付きは65cmまで寄れるので、近接が多い人はメガネ付きを選ぶのもアリだ。

ただし、ボディを薄型化するためにマウント部の飛び出し量が大きいM10では、メガネ部とボディ側ファインダーの間隔が広がってしまうため、厳密に言うと測距精度に影響が出る懸念がある。そこで、45度の傾斜で置いたピント確認スケールをレンジファインダーとライブビューで簡易的に比較テストしたところ、結果はほぼ一致したので実用的には問題はなさそうだ。しかし、中古で売られているメガネ付き35mmは何かにぶつけてメガネ部の平行が狂っているものも多いので、その場合はどのボディでも注意が必要である。

絞り開放で撮影。合焦部には明確なニジミがあってフンワリとした優しい写りとなる。オールドレンズは個体差が大きいので、これが実力というわけでは決してないと思うが、少なくとも50mmズミクロンのような鋭さはないだろう。ただ、今ではこの柔らかな写り方がオールドレンズらしい個性となる。 LEICA M10 / ISO100 / F2 / 1/4,000秒 / AWB / JPEG

こちらも絞り開放で撮影。もうひとつの作例に比べると撮影距離があるため、描写はちょっと先鋭度が高くなる。背景のボケ方も近距離ではかなりクセがあるが、このくらいの距離だと割と自然。LEICA M10 / ISO100 / F2 / 1/3,000秒 / AWB / JPEG

エルマー135mmF4(Mマウント)

スクリューマウント時代からあったヘクトール135mm F4.5の後継モデルとして1960年に登場したレンズ。1965年にはテレエルマー135mm F4に交代してしまうので、ライカレンズとしては比較的短命だったモデルだ。太ネジと細ネジの両方に対応する小さな三脚座が鏡胴に一体化されており、使い勝手もよく考えられている。レンズ構成は貼り合わせが全くない4群4枚の超シンプルなものだが、今回ライカM10と組み合わせて使ってみて、その実力の高さに驚いた。とにかく鮮鋭度と解像性能が優秀なのだ。

絞りを変えながら同一被写体を撮影してみると、もちろん絞り込むほど像質は上がっていくものの、その差はわずか。オールドレンズの場合、絞り込むと飛躍的に画質が上がるレンズが多い中、このレンズは絞り開放から相当に解像性能が出ていて、ある意味オールドレンズっぽくなく現代レンズのような特性だ。135mmで開放F4というまったく無理のないスペック設定もあるだろうが、この写りは凄い。M型用の135mmはレンジファインダーライカではフレームが小さすぎて使いにくいために、これまであまり評価されてこなかったが、ライブビューの使い勝手がいいライカM10との組み合わせなら、その隠された実力が発揮される。逆にオールドレンズらしい淡い描写を期待するなら、もう少し時代をさかのぼってスクリューマウント時代のヘクトールの方が要望にマッチするだろう。

絞り開放でも鮮鋭な描写で、周辺部の乱れも極めて少ない。深度が欲しいとき以外は絞り込む必要がほぼない高性能レンズだ。色の濁りもなく、とても57年前に設計されたレンズとは思えない。LEICA M10 / ISO100 / F4 / 1/3,000秒 / AWB / JPEG

最短撮影距離の1.5mで撮影。近距離でも合焦部の解像落ちはわずかで、フレアぽくならないのでコントラストも高い。ボケ味はさすがに賑やかで自然とはいえず、この点は現行レンズとは大きく違う。LEICA M10 / ISO100 / F4 / 1/3,000秒 / AWB / JPEG

ズミルックス35mm F1.4(Mマウント)

1961年に登場したズミルックス35mmは、開放F1.4とは思えないほど小型軽量な外観が特徴だ。Mデジタルとしては最もボディが薄型化されたライカM10にこのレンズを装着すると、フィルムライカ並みの軽快仕様となり、ルックス的にも最高によくマッチする。

写りについては絞り開放時の各収差を残した柔らかでフレアを伴った独特の描写が有名で、周辺光量落ちの大きさを含め、今回使った4本の中ではもっともオールドレンズらしいクセのある開放描写が得られる。ただし、絞り込むに従ってグングンとシャープネスが増し、解像性能が飛躍的に向上するのもこのレンズの特徴で、いわゆる「ジキルとハイド」的な2面性を存分に楽しむことができる。最短撮影距離が1mと遠めなので、ポートレートやスチルライフなどに使おうとすると少々もどかしい部分もあるが、それでもなおそういう用途に使ってみたくなるほど個性的な描写である。どうしても近接したい場合はライカM3用のメガネ付きバージョンもあり、こちらは65cmまで寄れるが、メガネは脱着できないので小型レンズならではの軽快感がやや薄れてしまうのが残念だ。

絞り開放で撮ると独特の柔らかい描写になる。柔らかさを強調するためにハイキーで撮った。周辺光量落ちは相当に大きいが、周辺落ちが大好物な筆者的にはまったく短所には思えない。よく言われるように、合焦部の繭を絡めたような描写はこのレンズならでは。LEICA M10 / ISO100 / F1.4 / 1/1,000秒 / AWB / JPEG

F8まで絞ると開放時とはまったく別のレンズになり、とてもシャープな描写に。ただし、シャープでも決して硬くはならず、柔らかいシャープ感とでも言うような繊細さがある。同時に周辺光量落ちや周辺画質も開放時とは比べものにならないほど改善されるのは驚きだ。LEICA M10 / ISO100 / F8 / 1/350秒 / AWB / JPEG

現行レンズとの使い分けが楽しいオールドレンズ

今回は最新のライカM10でオールドレンズを楽しんだわけだが、最初に書いたとおり、ライカM10とオールドライカレンズの相性は相当に良く、各レンズが持つクセや個性を存分に引き出せる能力があると感じた。特に解像感については、フィルムだとある程度のところでフィルムそのものの性能が飽和してしまうので、解像性能に定評があるレンズ同士だと違いが分からないことが多かったが、ライカM10ならばイメージセンサー側(あるいは画像処理側)の解像性能に余裕があるため、本当にどこまで解像しているのか見極めが付くし、それぞれのオールドレンズで異なる像質の違いまで見て取ることができる。ある意味フィルムカメラよりもレンズ描写をさらにディープに楽しめる部分もある。

もちろん撮影についていろいろな点で盤石な結果を求めるのであれば、やはり現行レンズの方が安心感がある。特にアウトフォーカス描写に冠してはオールドレンズは相当にクセがあり、焦点距離を問わず二線ボケやグルグルボケが出やすい傾向がある。このクセの強いボケ味を許容して心から楽しめるのなら問題はないが、一般的な意味でのクセのないボケ味を求めるのであれば、現行レンズの方が確実にハイレベルだ。それでも昔のレンズならではの強い個性は本当に楽しいし、表現とマッチすれば強い武器になってくれるのも確か。できれば現行レンズとオールドレンズの両方を用途に応じて使い分けるのが理想的だし、どちらにも良さは確実にある。

なお、言わずもがなな話ではあるが、オールドレンズは個体差が大きく、今回のインプレッションがすべての同一銘柄レンズにそのまま当てはまるわけではない。オールドレンズを嗜好するなら、そうした個体差を確認しつつ楽しめる余裕も欲しい。

協力:ライカカメラジャパン

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