西宮市の商社元社宅が一棟まるごとリノベーションの分譲マンションに。建替えでなくリノベを選択した理由とは – HOME’S PRESS(ホームズプレス)

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企業の保有する寮・社宅の現状

企業や官公庁・団体が保有・管理する住宅に、福利厚生の一環として社員や従業員を居住をさせている住宅は、統計上は「給与住宅」に分類されている。

企業にとって寮や社宅は、高度成長期「福利厚生」の中心であった。たくさんの労働力を確保するためには、地方から都市部に人々を移動させる必要があったが、企業が住宅を提供することで、優先して雇用が可能になった点も大きい。高度成長期は、都市部は地価が上がり続けていた時期でもあり、住居費が安く済むことは仕事を求める人々には大きな魅力であった。

また、かつての寮・社宅は、会社で所有する物件が多かった。当時の会計制度では、購入時の土地・建物の価格が帳簿上に残りそれが資産となる財務上のメリットもあった。しかしバブル崩壊を境に、企業の経費削減策や福利厚生の見直しなどによって、企業保有の不動産資産、寮や社宅は統廃合が進んでいく。統廃合の背景には、2005年に減損会計が導入され、築年が進み老朽化により資産価値の下がった社有物件は、時価が下がることで、かつてのような財務上のメリットが少なくなったという側面もあるようだ。

国土交通省の平成27年度住宅経済関連データ「所有関係別住宅ストック数の推移」によると、給与住宅のストック数は1993年の205万1千戸をピークに2013年には112万2千戸まで減少している。

今回、兵庫県西宮市に丸紅が保有していた旧社宅を取得し、リノベーションを施し、一般に分譲した例を紹介する。建て替えではなく、一棟まるごとのリノベーションによって得られたものとは、いったい何であったのだろうか。

給与住宅のストック数は1993年の205万1千戸をピークに2013年には112万2千戸まで減少している給与住宅のストック数は1993年の205万1千戸をピークに2013年には112万2千戸まで減少している

築22年のファミリー向け社宅をリノベーション

今回訪れたのは、西宮市にある株式会社リビタの「リアージュ西宮門戸厄神」。前述したように丸紅が所有していた築22年、全48戸の元社宅物件だ。リビタは2005年より、一棟まるごとリノベーション分譲事業を手掛け、2010年には一棟まるごとのリノベーションの仕組みでグッドデザイン賞を受賞している。「リアージュ西宮門戸厄神」は、関東圏では多くのリノベーション実績をあげている同社が、関西エリアでは初となる一棟まるごとリノベーション物件である。

今回の物件のリノベーションのポイントを担当者に聞いた。

「前面道路からの共用部分では、多少そっけなかったエントランス付近を開放的にし、既存の桜の木を活かしたランドスケープにしました。専有部では、既存の間取りをそのまま活かしたリノベーションではなく部屋を一度スケルトン化し、3つのデザインコースを設け、購入者が個性を生かして暮らせる選択肢を増やしています。プランの中には、大阪で家具・空間・プロダクト・グラフィックのデザインを手掛けるgraf(グラフ)さんのプラン例もあります。またスケルトン化することから、自由設計のプランも選ぶことができます」と、一棟事業本部プロジェクト推進第2グループの小林さんは説明する。

寮・社宅などの遊休不動産の活用として、今回のようにリノベーションし、分譲することについては、どう考えているのだろうか?

「遊休不動産の活用として寮や社宅はひとつの選択肢ですが、すべての社宅や寮がリノベーションによる分譲向きかは、実はわかりません。今回は、ファミリー向けにも十分に活用できる広さだったことで、活用の幅は拡がったと感じています。物件のポテンシャルによる、ということでしょうか」と一棟事業本部事業統括部長の三浦さんはいう。

写真左上:grafが手掛けたインテリア性の高い住戸プラン 写真右上:スケルトンされた住戸</br>写真左下:共用部も含めてリノベーションされた 写真右下:リノベーションに先駆けて行われたイベントの様子写真左上:grafが手掛けたインテリア性の高い住戸プラン 写真右上:スケルトンされた住戸写真左下:共用部も含めてリノベーションされた 写真右下:リノベーションに先駆けて行われたイベントの様子

リノベーションだからこそ出来た戸数の保持と共用部のゆとり

株式会社リビタの一棟事業本部(写真右)事業統括部長の三浦さんと(写真左)チーフコンサルタントの小林さん株式会社リビタの一棟事業本部(写真右)事業統括部長の三浦さんと(写真左)チーフコンサルタントの小林さん

駅からも近く、ロケーションの良い場所にあるこの旧社宅…。取り壊しての新築への建替えは、検討しなかったのであろうか?

「西宮のこの辺りは、お子さんをもつご家族には人気のある学校もあるため、大変注目されている場所です。

ただし、住みたい地域であるがゆえにこの地区は西宮市の『教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱』で、学校施設と生徒・児童・幼児数の関係から、教室数などが不足又は不足するおそれがある学校区を教室数不足などの状況により、解消するまでの間、住宅開発の戸数制限が設けられています。この地区では、一事業者が年間で供給できる戸数が30戸未満と決められています。今回の旧社宅物件も取り壊し、建て替えとなると、敷地を割りそれぞれに最大でも総戸数29戸のマンションを建てる…という選択肢しかありません。

そうなると、コスト上敷地にゆとりをもった計画は、なかなかできず、一戸あたりの価格は高くならざるを得なくなり、共用部も十分にとることがむずかしくなります。また、マンションあたりの世帯数が減る分、修繕や管理費も負担が増える、ということも考えられます」。実際、周辺の新築物件と今回の物件を同じ平米数で比較すると、新築の方が約1000万円ほど価格は高くなるようだ。

新しく建てた物件ではなかったが、新たにリノベーションをするにあたって、地元の方々への周知にも気を配ったという。事業統括部長の三浦さんは、

「リノベーション工事に入る前に、”ReBITA Art Feast”というイベントを開催しました。地域の方々にもリノベーション工事前にここがどう変わるのかを知っていただきたいと思ったからです。イベントには地元を中心とした約400名以上の方々に来ていいただきました」と、いう。

物件の持つポテンシャルを活かしつつ、街の風景も残したいという想いから、一棟まるごとリノベーションすることで、地域にも住人にも喜ばれているようだ。

多くの人々にとって、「新築か、中古か」は、未だ物件選びの最優先か?

「新築か、中古か」…という比較が未だに聞かれる。築年数で物件を選ぶことのすべてが良くないと言っているのではないが、「良い物件かどうか」の視点は、すでに「新築か、中古か」だけでは語れないように感じる。

今までは、住宅ローンや保証制度など新築物件にのみ優遇されていた仕組みも、徐々に見直しがされている。

中古物件の性能向上リフォームの促進を後押しするための、【フラット35】リノベの取扱も2016年10月から申し込み受け付けを開始している。また、懸念されている住宅の性能や構造の安全性についても、インスペクションなどの建物評価の整備も進んできている。

今回の西宮の物件は、建替えて新築にした場合では、戸数や共用部分でのゆとりを確保できなかったり、結果的にコスト高になる部分を一棟まるごとのリノベーションをすることで、物件の価値を保持することができている。

全国に残る遊休不動産や再活用がのぞまれる物件のすべてに、再生することがベストという答えがあてはまる訳ではないが、こういった取り組みが進むのは、物件を選ぶ側の我々の見方も問われていくように感じる。

新築であれ、中古物件であれ、「見る目を養う」こと…後悔しない物件選びをするためにはそれが一番大切だと思う。

取材協力:「リアージュ西宮門戸厄神」
http://www.rebita-nishikita.com/

築22年の社宅を一棟まるごとリノベーションした「リアージュ西宮門戸厄神」。</br>専有部だけでなく、共用部のランドスケープもリノベーション。春には既存の桜がランドスケープを彩る築22年の社宅を一棟まるごとリノベーションした「リアージュ西宮門戸厄神」。専有部だけでなく、共用部のランドスケープもリノベーション。春には既存の桜がランドスケープを彩る

2017年 03月17日 11時05分

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