頑丈という美学、「ゼロハリバートン」 – 朝日新聞

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 男性にとっての「ブランド」ものが増えたのは、1980年代以降であると思う。もちろん、それ以前からも、車ではメルセデスやBMWが、腕時計ではロレックスやオメガが一流のブランドであったことは変わりがない。一方で、それ以外のアイテムを考えると、男性の誰もが知っていて、しかも、一流品であると認められているブランドはそれほど多くはなかった。例えば、ライカのカメラ、モンブランの万年筆、レイバンのサングラス、デュポンのライター。名品と呼ばれる、こういった男の道具がいくつかあったぐらいである。

 ゼロハリバートンのアタッシェケース(写真1)は、間違いなく、そのころからのブランドのひとつ。パッと見て、頑丈であることがわかるたたずまい。「ゴルゴ13のように世界中を飛び回るビジネスマンになったあかつきには、多少の重さはいとわず、ゼロハリバートンのアタッシェを持つべし」。当時、そう心に決めていた男たちも多かったに違いない。

 ブランドの創始者アール・P・ハリバートン自身は、オイル事業で海外への出張を繰り返すビジネスマンであった。「どんな環境でも中身を保護するケース」が欲しいと考えた彼は、航空機設計エンジニアたちの協力を得て、密閉性と強度と耐久性を併せ持つアルミ合金を用いたアタッシェを製造。アメリカのカリフォルニアに工場を開設し、ハリバートンケース社としてビジネスをスタートさせたのは、38年のことである。30年代にハリウッドで活躍した、女優マレーネ・ディートリッヒも愛用した顧客のひとり(写真2)。当時の写真を見ると、のちのゼロハリバートンの象徴ともいえるダブルリブを施されたものではなく、ツルンとしたデザインであったことがわかる。

 46年、強度を持たせる2本のラインが入ったダブルリブモデルを発表。そして、ハリバートンケース社の製造を請け負っていたジラルドメタルコーポレーションに事業を移管。ジラルドの発音が難しかったため、社名をゼロコーポレーションとし、のちにゼロハリバートン社となった。47年の広告ポスター(写真3)では、仕事やプライベートで旅をするジェットセッターに向けて使用シーンが訴求されている。

 そして、ゼロハリバートンの名を世界に知らしめるエポックが69年に起こる。NASAの依頼により、アポロ11号「月面採取標本格納器」を製造(写真4)。ゼロハリバートンの製品の内側を改造しただけのケース(写真5)が、月から石と砂を持ち帰ったのだ。「どんな環境にも対応できるケース」を作りたいというアール・P・ハリバートンの思いは、世界を飛び越えて、宇宙に到達したのである。

 男たちは、こういったエピソードに弱い。伝説のフォトグラファーが使ったカメラ、文豪が執筆の相棒としていた筆記具、月の石を運んだアタッシェケース。自分自身はフォトグラファーでも、文豪でも、ましてや宇宙飛行士でなかったとしても、同じ道具を使うことで、歴史に名を残す偉人たちに思いを馳(は)せる。アメリカが偉大であった時代。宇宙への挑戦と到達は、それを証明するような出来事であったといっても過言ではない。ヨーロッパ生まれの「ブランド」ばかりだった時代に、ゼロハリバートンはアメリカの強さを象徴する「ブランド」として知れ渡ったのだ。

 しかしながら、その後、ゼロハリバートンのアタッシェが中国で生産されるようになっていたことは周知の事実。それが、16年の夏から、再びアメリカ生産のケースが登場している。まずは、「ZROポリカーボネート」というシリーズのスーツケース(写真6)。耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂を採用しながら、溝状に配されたダブルリブが、しっかりと伝統を感じさせてくれる。16年12月からは、「クラシック ポリカーボネートAT」(写真7)も登場している。そして先日、ゼロハリバートンは17年からすべてのプロダクトをアメリカで生産することを発表。17年1月1日にゼロハリバートンの新CEOに就任したトム・ネルソン氏は、次のように語っている。「自国生産には強い意味がある。どこで生産されているのかは、ブランドの信用性や本物志向を表すことになる。伝統や歴史を再構築して、ブランドとしての輝きを取り戻したいのだ。アメリカンブランドの象徴であるゼロハリバートンから、ユニークさやオーセンティックな魅力を感じてほしい」

 あのころ、「大人になったらゼロハリバートンを持ちたい」と考えていた男たちには、とびきりの朗報ではないか。グルッと回って、Made in USAブランドの再来である。

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